<< 酒と蕎麦 ニコニコ動画のアカウントを取りました >>

本の感想『完全版 アレクサンドロス ~世界帝国の夢』(安彦良和)

なんにも更新しないのもどうかなあと思うので、読んだ本のことでも書いてみます。



完全版 アレクサンドロス ~世界帝国の夢
NHK出版 著:安彦良和


 古代西洋世界で最高の軍指揮官とも言われる、アレクサンドロス大王(カタカナ表記では「アレクサンダー」の方が一般的)の生涯を描いた漫画です。
 わずか260ページほどの読み切りで一人の英雄の人生を語りきろうとする。だからどうしても要約っぽい感じが抜けないかなあ……などと予想しながら読んでみたら、まったくそんな印象を受けないので驚きました。
 作者の構成の上手さもそうですが、それ以上にアレクサンドロスという人間が、まさに全力疾走のような一生を送っているためでしょう。
 18歳で初陣を迎え、20歳で王に即位し、24歳でエジプトを征服し、26歳でペルシアを滅亡させ、30歳でインドにまで到達し、33歳にして熱病のため急死。まるで神話の英雄のような生き方です。
 ですがそんなアレクサンドロスを、この漫画では弱い人間として描いています。
 武勇と知略に優れていても、短慮で間違いも多くどこか劣等感に苛まれ続けている若者です。酒席での口喧嘩の末に部下を刺し殺してしまい、そしてそのことを深く後悔して何日も臥せってしまうといったような。
 幼少時からアレクサンドロスのそばにいる戦友たちも、彼の強さというよりは弱さのために付き従っているといった印象を抱かせます。
 短く激しいお祭のようなアレクサンドロスの一生が終わった後に、彼の戦友たちは後継者の地位を争い、ぐちゃぐちゃの内戦を始めます。友人同士で互いに殺しあう凄惨な戦いのさなかに、彼らはアレクサンドロスと共にあった懐かしい日々を回顧する……。そんな物語です。
 この漫画はまごうことなき青春漫画でした。アレクサンドロスほど、熱くたぎった青春時代を送り、そして青春の終わりと同時に死を迎えたという人物はそうはいないでしょう。歴史上の偉人を伝える漫画ではなく、ある素晴らしい青春を送った若者を描いた作品になっています。
 安彦良和とアレクサンドロスという取り合わせに惹かれて買ってみましたが、期待を裏切らない素敵な漫画でした。

 あと、どうでもいいことですが、この人の描くアレクサンドロスはどうみてもアムロ・レイにしか見えません。
[PR]
by ng-room | 2008-07-08 22:56 | 感想
<< 酒と蕎麦 ニコニコ動画のアカウントを取りました >>